知っていますか?さい帯とさい帯血を凍結保管する必要性とメリット

記事監修者:坂田陽子
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

日本では、まだまだあまり知られていない「さい帯(へその緒)」と、その中を流れる「さい帯血」の凍結保管。
さい帯・さい帯血を凍結保管しておくと、産まれてくる赤ちゃんの万が一の病気などに備えられるというメリットがあります。
しかし凍結保管ができるチャンスは、出産後のわずかな時間だけ。
そのため、出産前からの準備が必要です。
そこでこの記事では、
・さい帯・さい帯血とは?
・さい帯・さい帯血を凍結保管する必要性とメリット
・さい帯血の凍結保管方法
・さい帯血の凍結保管費用
についてご紹介します。
この記事を読むと、さい帯・さい帯血への理解が深まり、凍結保管について後悔のない選択ができますよ。
凍結保管する・しないにかかわらず、これから出産を迎える方には、知っておいていただきたい内容です。
ぜひ最後までお読みください。
さい帯・さい帯血とは?
「さい帯」とはおなかの赤ちゃんとお母さんを繋ぐへその緒のことをいいます。
そして、このへその緒と胎盤を流れる血液が「さい帯血」です。
妊娠中はお母さんから赤ちゃんに必要な酸素や栄養を運ぶとても大切な役割を担っていますが、無事に赤ちゃんが生まれると、その役目を終えます。
これまで出産後に切ったさい帯と、その中にあるさい帯血は、捨てられてしまうことがほとんどでした。
さい帯・さい帯血を保管する必要性とメリット
さい帯やさい帯血の中には、人間の体をつくる元となる「幹細胞」が豊富に含まれています。
そのため、多くの病気に対する治療手段として活用が期待されています。
たとえば赤ちゃんに何らかの病気が見つかったとき、さい帯やさい帯血を凍結保管しておけば、効果的な治療手段として活用できる可能性があるのです。
さい帯血は、白血球などの治療に用いられる
さい帯血には、幹細胞の中でもとくに、白血球や赤血球の素となる「造血幹細胞」が多く含まれています。
そのためさい帯血は、おもに白血病などの血液疾患や、遺伝疾患の一部の治療に用いられています。
上記以外にも、十分な治療法が確立されていないさまざまな病気の新たな治療法として、さい帯血を活用する開発(研究)が進んでいます。
現在、国内外において、さい帯血を使った臨床研究が行われている主な疾患をまとめてみました。
症状・疾患 |
詳細 |
脳性まひ | 出産時2~3/1,000人の確率で発症 |
低酸素性虚血性脳症 | 出産時に仮死状態が長時間続くことなど、脳への血流量低下に伴う脳障害。脳性麻痺に移行する場合がある。 |
自閉症 | 日本では1~2/100人の確率で発症 |
さい帯(へその緒)は、再生医療の分野で注目
さらに最近の研究では、さい帯血だけでなく、さい帯そのものにも、神経・筋肉・骨などさまざまな細胞に分化する「間葉系幹細胞(MSC)」という、別の幹細胞が豊富に含まれることがわかってきました。
間葉系幹細胞(MSC)は、炎症が起きている場所に駆けつけて炎症を鎮めたり、傷ついた臓器を修復する力を持っています。
そのため、再生医療の分野での活用に注目が集まっているのです。
さい帯・さい帯血の幹細胞を守りながら保管するには?
幹細胞は大人の血液の中にはほとんどないため、幹細胞が豊富に含まれているさい帯・さい帯血はとても貴重なものです。
しかし、出産後に役目を終えたさい帯・さい帯血と、その中に含まれる幹細胞は、そのままではすぐに死滅してしまいます。
そこで、出産後に切ったさい帯・さい帯血をすぐに凍結保存することで、貴重な幹細胞を生きたまま長期間保存することができます。
なお、さい帯血だけでなく、さい帯も凍結凍結できるのは、国内ではステムセル研究所のみです。(2024年11月現在)
▼ステムセル研究所について詳しくはこちら
株式会社ステムセル研究所提供 さい帯・さい帯血保管サービス「HOPECELL」
さい帯血を使った治療の実例
実際に、さい帯血を使った病気の治療実例をご紹介します。
非営利団体「Cerebral Palsy Alliance」と民間さい帯血バンク「Cell Care」の提携によって実現した「脳性麻痺」の治療実例(妊産婦向け世界最大のさい帯血情報サイト「Parent’s Guide to Cord Blood」で紹介)
・対象のお子さま:生後18か月(診断時)の男の子
・症状:左半身(足や手など)をうまく使えない
・診断結果:胎内で脳卒中を起こしていたことが判明。左片脳性麻痺と診断される
・さい帯血治療に至った経緯:母親が2人目の子どもを身ごもっている際に、さい帯血を活用した臨床試験のパンフレットを見つける
・治療:2人目の子どもを出産する際に、さい帯血を採取。男の子へさい帯血を投与
・投与後:左腕の力が入るようになり、動きが目に見えてよくなった。知的能力が高まった。積極的になった
・両親の声:さい帯血療法により、かつて息子にはできないのではないかと心配していたすべてのことが できるようになったと考えている
出典:ブローディの脳性麻痺へのきょうだい臍帯血療法|Parent’s Guide to Cord Blood Foundation
さい帯血保管をする2つのデメリット
さい帯血保管には「大切な家族を守れる」という大きなメリットがありますが、デメリットも存在します。
・費用がかかる
・採取できない可能性がある
それぞれ順番に見ていきましょう。
デメリット1:費用がかかる
さい帯血を家族のために使用できる「民間バンク」へ保管するためには、費用負担が必要です。
後述しますが、民間バンクの場合、10年間の保存をすると「約36万円(ステムセルで保管する場合)」の費用がかかります。
ただし、分割払いにも対応しているため「一括で資金を準備できない」といった人も利用しやすいでしょう。
費用面は慎重に検討する必要がありますが、分割払いなどの支払い方法を活用することで、より計画的に準備できます。
費用感を知りたい人は、下記から料金のシミュレーションをしてみてくださいね。
→ステムセル研究所の料金シミュレーションはこちらから
デメリット2:採取できない可能性がある
さい帯血の採取は、出産時の状況により影響を受ける場合があります。
通常の経膣分娩であれば問題なく採取できるケースがほとんどですが、
・緊急帝王切開
・早産
・出血多量
などの場合は採取がむずかしくなることも。これは母体と赤ちゃんの安全を最優先するためであり、医療機関の適切な判断によるものです。
また、さい帯血の採取はできても、細菌の混入や検体量の不足などの理由により、「約10人に1人」の割合で保管に至らないケースがあるのです。
ステムセル研究所の場合、さい帯・さい帯血の両方とも採取できなかった場合は、費用は発生しません。
さい帯血保管をする人の割合
「どのくらいの人がさい帯血保管をしているのだろうか」と気になるところですよね。
実際にヒューマンライフコード株式会社が、妊婦さんを対象に「出産後のへその緒の使い道」について調査を行っています。
調査結果として「さい帯・さい帯血保管を医療品原料材などに使用できるよう保管・寄付する」と回答した人は「5/23(約22%)」でした(※1)。
調査結果から「ほかの人の役に立ちたい」「家族を守りたい」と考える人が広がっているといえるでしょう。
(※1)出典:PR TIMES|ヒューマンライフコード株式会社「臍帯(へその緒)の医療資源活用に関する妊婦の意識調査。「出産後のへその緒、医療資源として提供してもいい」が半数以上。」
さい帯血の凍結保管方法について
さい帯血の凍結保管には2つの方法があります。
・公的バンク
・民間バンク
公的バンク、民間バンクの違いについてご紹介します。
公的バンク
公的バンクは、さい帯血を無償で提供し、白血病などの血液疾患の治療に広く役立ててもらうことを目的としています。
保管というよりも寄付という言葉の方がしっくりくるかもしれません。
公的バンクに凍結保管するさい帯血は、白血病などの病気で移植を必要としている患者さん(第三者)の治療に役立ててもらうことができます。
民間バンク
一方、民間のさい帯血バンクは、これから生まれてくる赤ちゃんとその家族のために凍結保管をしておくというものです。
万が一さい帯血が必要になった時に、いつでも取り出して利用することができます。
民間バンクは、赤ちゃん自身のさい帯血を使えるため、治療の際に拒絶反応などが起きにくいことがメリットです。
また、遺伝子の近い兄弟・家族の治療にも効果が期待できます。
さい帯血の凍結保管費用について
さい帯血の凍結保管方法には、公的バンクと民間バンクの2つがあることがお分かりいただけたかと思いますが、それぞれ保管費用はどの程度かかるのでしょうか。
公的バンクの費用
まず公的バンクの場合には、第三者の治療のために採取・保管を行うため、費用を支払う必要はありません。
民間バンクの費用
一方、民間バンクの場合は赤ちゃんの将来のために赤ちゃん自身のさい帯血を保管するため、費用がかかります。
国内最大手の民間バンクであるステムセル研究所の保管費用は、10年間でおよそ36万円です。
→ステムセル研究所の料金について詳しくはこちら
さい帯血の凍結保管についてのFAQ
ここではさい帯血保管について、よくある7つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。

研究所
採取されたさい帯血は、ご出産後48時間以内に細胞処理センター(CPC)に届けられ、幹細胞などを分離する作業を行い、凍結保管されます。

研究所
また出産後のさい帯から採取するため、赤ちゃんにも負担や影響はありません。

研究所
採取をしてもらえる病院でも、赤ちゃんやお母さんの容態や出産の状況によっては採取できないこともあります。
さい帯血の凍結保管をしたい場合は「分娩を予定している病院がさい帯血バンク(公的バンクや民間バンク)と提携しているか」「さい帯の採取をしてもらえるか」事前に確認しておく必要があります。
一度、かかりつけの産婦人科で確認しておきましょう。

研究所
さい帯は、出産後に切ったあと、一部が赤ちゃんのおへそに残ります。
数日~数週間で自然にとれるため、とれたさい帯を桐箱などに入れ、記念に手元に保管できます。
▼さい帯(へその緒)を記念に保管する方法について詳しくはこちら

研究所

研究所
文献的には液体窒素で29年間保管したさい帯血幹細胞の有効性を示すデータが報告されています。

研究所
ステムセル研究所では、神奈川県横浜市にある国内最大級規模の細胞保管センターにて、さい帯血を長期保管しています。
まとめ
さい帯・さい帯血は、幹細胞が豊富に含まれる貴重なものです。
現在十分に治療法のない病気も、さい帯やさい帯血の利用で、新しい治療法が生み出される可能性があります。
さい帯血は、「公的バンク」「民間バンク」のいずれかに凍結保管できますが、赤ちゃん自身や家族のために凍結保管したいなら、民間バンクがおすすめです。
また、さい帯血だけでなく、さい帯も凍結保管できるのは、国内では民間バンクの「ステムセル研究所」のみです。(2024年11月現在)
さい帯・さい帯血が採取できるチャンスは、出産後のわずかな時間。
さい帯血の凍結保管が気になっている方は、
・保管するかどうか
・保管目的と保管場所
・保管費用
などについて出産前から入念に調べ、準備しておくことで、後悔のない選択をしましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー