臨月にむくみを発症しやすい原因とは?3つの改善方法や注意点も解説

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

出産経験のある人は、妊娠中に「むくみ」を経験したことがあるのではないでしょうか。
むくみとは、「浮腫(ふしゅ)」のことです。
「足がパンパンになる」
「靴下の跡がなかなか消えない」
「足が重く不快」
など、これを読んでいるあなたも、臨月が近付くにつれてむくみに悩まされているかもしれません。
つらいむくみの症状ですが、改善する方法はあります。
この記事では主に、以下のような内容を解説していきます。
- 臨月の妊婦さんがむくみやすい原因
- 臨月のむくみの影響
- 臨月のむくみの改善方法
この記事を読むと、むくみの悩みが軽くなり、出産までの期間を快適に過ごせるようになりますよ。
臨月に入りむくみがひどくて悩んでいる…という妊婦さんは、ぜひ参考にしてください。
むくみとは?
むくみとは血液中の水分が血管の外へしみ出し、細胞の外にたまっている状態のこと。
人間の体内では、細胞内と細胞外の水分バランスが保たれていますが、細胞外の水分が多くなることによって引き起こされます。
これがむくみ、すなわち「浮腫」です。
妊婦さんでは、とくに臨月に近付くにつれてむくみが多く見られます。
臨月の妊婦さんにむくみが起こりやすい3つの原因
妊婦さんは主に以下3つの原因によって、むくみが起こりやすくなっています。
- ホルモンバランスの変化
- 子宮による大静脈圧迫
- 血液量の増加
順番に内容を解説します。
原因1:体内の水分バランスの変化
妊娠中は、胎児 により多くの酸素や栄養素を届けるために、体に水分を保持させるホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が多く分泌されます。
エストロゲンとプロゲステロンが同時に高濃度で存在すると、水分の吸収力が高まる傾向があります(※1)。
妊娠後期には、とくにこの傾向が強くなり、体の水分バランスが変化しやすくなるのです。
また妊娠中は胎児の成長をサポートするために、体内の血液量が通常の約1.5倍にまで増加します(※2)。
増えた血液により循環系への負担が増し、とくに下肢ではむくみやすい状態になるのです。
赤ちゃんの発育を守るための母体の自然な反応ですが、同時に臨月のむくみという症状を引き起こす要因となっています。
これらの作用によって、通常なら尿として排出される水分が体内に留まりやすくなっています。
(※1)出典:J-STAGE|奈良女子大学生活環境科学系生活健康学領域(鷹股 亮)「体液調節と女性ホルモン」日本生気象学会雑誌2017 年 54 巻 2 号 p. 57-64
(※2)出典:順天堂大学医学部附属静岡病院産 婦人科「こうのとりくらぶ」vol.41 2016春号
原因2:子宮による下大静脈圧迫
臨月になると子宮は胎児の成長に合わせて大きくなり、下半身から心臓へ血液を戻す役割を持つ下大静脈を圧迫します。
下大静脈が圧迫されると、足からの血液が心臓へ戻りにくい状態で、足に血液が溜まりやすくなり、むくみを引き起こすのです。
子宮の重さや腹部が前に出ることで姿勢が変化し、重心が前に移動することも関係しています。
このような状態で、立っている時間が長いほど足への血液が溜まり、むくみが悪化します。
子宮による圧迫が血流を妨げ、むくみを引き起こす要因となっているのです。
原因3:血液量の増加
妊娠中は体内を循環する血液量が増加します。
出産時の出血に身体が備えようとするためです。
血液量が増加すると、血管内の圧力が増え、むくみの原因となります。
妊娠中は胎児の成長をサポートするために、体内の血液量が通常の約1.5倍にまで増加します(※3)。
増えた血液により循環系への負担が増し、とくに下肢ではむくみやすい状態になるのです。
(※3)出典:順天堂大学医学部附属静岡病院産 婦人科「こうのとりくらぶ」vol.41 2016春号
臨月のむくみに悪影響はないのか?
血液量が増えることによる足などのむくみは、ほとんどの妊婦さんが経験する生理的なものといえます。
腫れぼったさや不快感がありますが、生理的なむくみは健康的な妊婦さんにも起こり得るため、それほど心配はないと考えられています。
そのため、日常生活に支障がない程度のむくみであれば、それほど心配はありません。
また出産後は、自然とむくみが解消される妊婦さんも多いです。
ただし、まれに妊娠中の病気が原因で起こるむくみもあるため、体に異変がないか注意しておきましょう。
こんな臨月のむくみには注意!妊娠高血圧症候群が疑われるケース
むくみのなかには、妊娠中特有の病気が原因で起こるものもあります。
たとえば、「妊娠高血圧症候群」でむくみの症状が見られることも珍しくありません。
妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降分娩12週の間に高血圧になることです。
さらに蛋白尿が見られることもあります。
以下の症状がみられる妊婦さんは、病気が原因のむくみが疑われるため担当の医師へ相談しましょう。
- 血圧が140/90mmHg以上
- たんぱく尿が出る
- 手のむくみや全身のむくみ
- 急に悪化するむくみ
- 急激な体重の増加
- 尿量が減る
- 目がチカチカする、視覚異常
- けいれん
- 頭痛
- みぞおちの右側の痛み
日頃の食生活で塩分を過剰摂取すると、むくみやすくなるだけでなく、妊娠高血圧症候群になるおそれがあるため注意が必要です。
塩分は控えめに、水分は適度に補給しましょう。
【体験談】臨月のむくみと妊娠高血圧症候群
これは実際にむくみを経験した妊婦さんの話です。
第一子の妊娠中、妊娠中期から血圧が上昇してしまい、毎日血圧を測定したところ、病院でチェックしてもらうことに。
結果赤ちゃんの万が一のことを考慮して、個人病院から、NICUのある総合病院へ転院が決まり、とても不安でした。
定期健診のときには、まったく問題のなかった血圧が急に高くなっていて、驚いたことを覚えています。
「個人差はあるけど、出産までに徐々に血圧が上がりやすいから気をつけてね」と助産師さんに言われましたが、本当でした。
血圧が下がりにくい状態になったため、徹底的に食事の塩分に気をつけて生活をしていましたが、どんどん血圧が上がってしまったのです。
出産の2週間ほど前から、手のむくみを感じて痛かったり、たまに頭痛を感じたりして、血圧も高い状態が続きます。
担当の医師から「次の健診の時には入院したほうがいいと思うので、さらに血圧が上がらなくても入院の準備をしておいてください。高くなったら即入院です」と言われました。
しかしこの2日後、予定よりもひと月ほど早く破水して出産を迎えたため、入院をすることはありませんでした。
「妊娠高血圧症候群」は母体死亡や胎児新生児の死亡の原因となることもあるため、とても心配して生活していました。」
臨月のむくみを改善する3つの方法
手足のむくみは、痛みが伴うこともあるため、つらい症状ですよね。
ここでは、臨月のむくみを改善する3つの方法をご紹介します。
改善方法1:塩分を控える
まずは毎日の食事における塩分管理です。
妊娠中の塩分の摂りすぎはむくみを悪化させるだけでなく、妊娠高血圧症候群のリスクも高めるため注意しましょう。
一般的に妊婦さんの塩分摂取目標量は1日6.5g程度とされており、意識して控えめにすることが大切です(※4)。
実際には多くの女性が目標量を超えており、成人女性の平均摂取量は9.0g(※5)にもなっています。
塩分の多い食事をすると体内の塩分濃度を調整するために水分が必要となり、結果としてむくみがひどくなることがあるのです。
むくみ対策として効果的なのが、カリウムを含む生野菜や生果物を積極的に摂ること。
カリウムには余分な水分を排出する働きがあり、むくみの軽減に役立ちます。
また鉄分を多く含む食品の摂取も重要で、タンパク質やビタミンCと組み合わせて摂ると吸収率が高まります。
健診で高血圧傾向や尿タンパクが検出された場合は、医師から塩分制限の指示が出ることもあるため、指示に従って調整しましょう。
食事の工夫としては、味付けを調理の最後に行うことで塩分を控えつつ満足感を得る方法も効果的です。
適切な塩分管理と栄養バランスの良い食事を心がけることで、臨月のむくみを効果的に予防・軽減できるでしょう。
(※4)出典:坂井市役所(本庁)「妊娠中の体重と食生活について」
(※5)出典:厚生労働省「令和4年「国民健康・栄養調査」の結果」
改善方法2:足のリンパマッサージをする
むくみを改善するには、足のくるぶし、ふくらはぎ、太ももなどをゆっくりさすり上げるリンパマッサージがおすすめです。
体の外側から心臓に向かって行うと効果的です。
強く押すのではなく、血液やリンパ液が心臓に戻りやすくなるよう、優しく撫でるようにマッサージします。
むくみがひどい場合は、マッサージに加えて足を10〜15センチ程度高くして横になると、血行が良くなり足に溜まった血液や老廃物が流れやすくなります。(※6)
ただし、足を高く上げすぎると逆に足の付け根が圧迫され、むくみが強くなる場合があるので注意が必要です。
また、大きくなったお腹が苦しい場合は、無理に寝転んだ姿勢を続けないように気をつけましょう。
(※6)出典:順天堂大学医学部附属静岡病院産 婦人科「こうのとりくらぶ」vol.41 2016春号
改善方法3:むくみに効く漢方を飲む
むくみには、利水作用のある以下のような漢方が処方されることがあります。(※7,8)。
- 柴苓湯
- 当帰芍薬散
なかには妊娠中に服用すると、悪影響をおよぼす漢方もあるため、必ず産婦人科で相談のうえ処方してもらいましょう。
出典:(※7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構|小太郎漢方製薬株式会社「柴苓湯」
出典:(※8)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構|株式会社ツムラ「ツムラの漢方製剤」
臨月のむくみに関するQ&A
ここでは臨月のむくみについて、よくある3つの質問をまとめました。
順番に見ていきましょう。


なるべくお水やお茶を摂取し、ジュースやコーヒー類などは控えめにしましょう。
水分摂取量が少ないと、むくみが悪化する可能性があるため、こまめな水分補給を心がけましょう。

ただし着圧の強いものは血流を妨げ、浮腫みを悪化させる可能性があるため、適度な圧のものを選びましょう。
まとめ
妊婦さんのむくみは、生理的な症状であるため心配のない場合も多いです。
しかし「症状がひどい」「血圧が高い」「頭痛を伴う」場合は、妊娠高血圧症候群を発症しているケースもあります。
ただのむくみだと油断せず、塩分の摂りすぎに注意しながら、リンパマッサージなどのセルフケアで症状緩和につとめましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー