帝王切開後の回復までどのくらいかかる?回復を早める方法や注意点も解説

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

初めての帝王切開による出産をひかえているが、体調が回復するまでどれくらいかかるのだろうと考えていませんか。
帝王切開の入院期間は「約8日」ですが、個人差があり、長引いてしまうことも(※1)。
しかし、回復を早めるためにできることはあります。
この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。
・帝王切開後の回復までにかかる時間
・回復を早める方法
・帝王切開後の生活で注意すべき行動
この記事を読むと、帝王切開後の生活における不安や心配がやわらぎますよ。
(※1)出典:独立行政法人国立病院機構東京医療センター「産科病棟入院案内」
帝王切開後の傷跡が治るまで【3か月~1年】
帝王切開の産後に大切なこととして、傷跡のケアがあります。
傷口は術後3日くらいで閉じてきますが、肌の色に近い傷痕になるまで3か月から1年はかかるといわれています(※2)。
抜糸や抜鈎が終わったらケアを始めていきましょう。
ポイントは伸展刺激の抑制(皮膚を伸ばさないようにすること)です。
専用テープでケアすることで皮膚が赤く盛り上がる肥厚性瘢痕やケロイドを防げます。
(※2)出典:ニチバン株式会社「知っておきたい!手術後の傷あとケア」
帝王切開でも後陣痛は起こる
出産後、子宮が元の大きさに戻ろうとする収縮で起こる痛みを「後陣痛」といいます。
帝王切開で出産した場合でも、通常の経腟分娩と同様に後陣痛は起こります。
帝王切開後には、後陣痛の痛みにくわえて手術で切開した部分の傷の痛みも同時に感じ、2種類の痛みが生じることになります。
麻酔が切れたあとに、傷口の痛みと後陣痛が重なって強い痛みを感じる場合もありますが、時間の経過とともに徐々にやわらいでいきます。
痛みが強い場合は、鎮痛剤を使用できることが多いため、我慢せずに医療機関に相談しましょう。
ただし、自己判断での市販薬の服用は厳禁です。
帝王切開後は腸が痛む場合もある
帝王切開後には、手術後の腸管の動きが低下したり、お腹の中に炎症が生じることで、腹痛や腹部膨満感がある場合も。
帝王切開後に腸の痛みが生じる原因としては、腹膜や腸間膜、腸管どうしの癒着があげられます。
癒着によって腸の動きが制限されると、腸の内容物の通過が悪くなり腸閉塞という状態になるケースも。
また帝王切開後、腹痛や腹部膨満のほかに、
・嘔気や嘔吐
・排便や排ガスの停止
などの症状がある場合も癒着による腸閉塞の可能性があります。
対処法として、
・絶食
・経鼻胃管(鼻から胃に管を挿入する処置)
を行い、腸を休ませることで症状は改善します。
しかし数日間の保存的治療で、改善が見られない場合や腹痛が悪化する場合には、手術を検討する必要があるため、高次医療機関への搬送が必要となる場合もあるため注意が必要です(※3)。
(※3)出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「 Q3.帝王切開後に腸閉塞が疑われた際の対応は?」
帝王切開後の回復を早める方法【5選】
ここからは、帝王切開後の回復を早める方法をご紹介します。
・充分な睡眠をとる
・栄養がある食事をとる
・毎日歩く
・傷口を清潔に保つ
・締め付けがない服を着る
方法1:十分な睡眠をとる
帝王切開は手術のため、体への負担は大きいものです。
それにくわえ傷口の回復を待ちながら赤ちゃんのお世話も始まります。
そうなると体を休める時間は貴重です。
出産直後は授乳などで睡眠時間も限られますが、時間の許す限り体を回復させることを優先させましょう。
方法2:栄養がある食事をとる
医療機関によって異なりますが、帝王切開後の食事は五分粥などが中心となり、3〜5日で普通食となります(※4)。
退院後も栄養のある食事を心がけましょう。
産後の体が回復するまでには約6~8週間かかります(※5)。
なおかつ術後の傷跡があるため、傷の回復のためにも栄養をつけましょう。
具体的には、以下の栄養素の摂取が大切です。
栄養素 | 詳細 |
鉄分 | ・貧血の防止に欠かせない ・出産時の出血、授乳などで鉄分が失われる機会が多い |
葉酸 | ・赤血球をつくる働きがある ・貧血防止 |
(※4)出典:独立行政法人 地域医療機能推進機構 北海道病院「帝王切開術で出産される方へ 」
(※5)出典:浜松市子育て情報サイトぴっぴ「帝王切開後の生活で気を付けることは?」
方法3:毎日歩く
傷口の痛みの程度によりますが、手術翌日から歩行可能です。
悪露やガスを早く体外へ出したり、血栓ができることを防いだり、癒着を防ぐためには、なるべく術後早いうちから体を動かすことが必要です。
術後すぐはトイレに行くまでの短い距離から始めて、少しずつでよいので歩けるように努力しましょう。
方法4:傷口を清潔に保つ
手術直後は傷の上に専用のテープを貼ります。
傷自体は3日ほどでふさがりますが、その後赤くなる炎症期を経て目立たなくなるまでには1年ほどかかります。(※6)
傷跡の固定や保護のためにテープを貼っておき、数日に一回交換すると傷がきれいに治っていくでしょう。
その際、傷は清潔にシャワーで流しましょう。
傷を治すための血球の働きも妨いでしまうため、傷の消毒は行わず水で洗い流し清潔に保つことが基本です。
(※6)出典:ニチバン株式会社「知っておきたい!手術後の傷あとケア」
方法5:締め付けがない服を着る
傷跡がこすれると摩擦によって傷の治りが遅くなったり痒みが出ます。
術後しばらくは、マタニティ用の下着やズボンなど締め付けのないゆったりとした服を着ることをおすすめします。
帝王切開後の回復が遅くなる!?生活で注意すべき行動
帝王切開後の生活では、体に負担をかけずに生活することが大切です。
産後約1か月は、しゃがんだり、重いものを持つなど、おなかに力を入れる行動をとると傷口が痛む可能性があります(※7)。
家事代行やネットスーパー、宅食サービスなどを利用しながら、身体に負担のかからない生活を送るのがベストです。
痛みなどが落ち着いていれば、少しずつ軽い家事などは始めてもよいでしょう。
ただし育児を優先し、そのほかの家事は少し手を抜くか、家族に協力してもらい負担を減らしましょう。
車の運転も身体に負荷がかかるので注意が必要です。
また性行為については産後の「1か月健診」が終わるまではひかえるのが無難です(※8)。
帝王切開後の身体に負担がかからないよう気をつけましょう。
(※7)出典:平川市役所「パパも知識を持って出産を迎えよう」
(※8)出典:前橋赤十字病院「第4章 お産後と育児について 」
帝王切開後の妊娠については医師と相談する
帝王切開後の妊娠は2年以上あけるのが理想的 とされています。(※9)
しかし妊娠、出産するには、体の回復が万全で周囲の十分なフォローや協力があり、心身共に余裕をもって生活できる状態であることが大切です。
また帝王切開で出産した経験がある場合、子宮破裂を起こすリスクがあります。
手術で赤ちゃんを取り出すために切開して縫い合わせた子宮の傷が次回の妊娠で裂ける可能性があるからです。
また子宮の傷は治っていたとしても切開した箇所は周りの子宮壁に比べて薄く脆弱になっているため、子宮破裂が起こる可能性があります。
子宮破裂で最も多く見られるのが、帝王切開による出産を経験した方が次の出産で経腟分娩を行ったケースです。
次回の妊娠で経腟分娩を検討している方は、よく医師と相談するようにしましょう。
(※9)出典:前橋赤十字病院「第4章 お産後と育児について 」
帝王切開後の回復を早めるために活用したいサポート
「産前・産後サポート事業」や「産後ケア事業」をご存じでしょうか。
妊産婦や乳幼児が安心して健康な生活ができるよう、国のガイドラインに沿って各市町村が支援のためのサービスを行っています。
・地域の保健師
・助産師
・看護師
・保育士
・管理栄養士
・心理士
などの専門的な知識を持った人のほかに、子育て経験者や地域の人が連携して利用者目線に立った一貫性、整合性のある支援を実現することを目指したサービスです。
産後ケア事業ではあなたの
・身体的な回復のための支援
・授乳の指導および乳房のケア
・不安や悩みを傾聴する
などの心理的支援、新生児および乳児の状況に応じた具体的な育児指導、家族などの身近な支援者との関係調整、地域で育児をしていくうえで必要な社会的資源の紹介など具体的な支援を行っています。
各事業によってサービスの種類もさまざまです。
産前・産後サポート事業では、下記2つのタイプがあります。
・アウトリーチ型(利用者宅への訪問、電話、メールによる個別の相談など)
・集団型(支援センターなどに集まって集団で相談や交流を行う)
また産後ケア事業には、
・ショートステイ型(病院や病床施設のある診療所などに宿泊しながらケアを受ける)
・デイサービス型(病院や診療所、助産所、保健センターなどで個別または集団でケアを受ける)
・アウトリーチ型(自宅でケアを受けるタイプ)
の3種類があります。
自分に合ったサービスを探し、うまく活用してみましょう。
帝王切開後の回復期間の過ごし方FAQ

帝王切開後の回復期間の過ごし方について、よくある質問と回答をご紹介します。

市販薬などを飲む場合は医師に相談してください。

いろいろなタイプがありますが、特に帝王切開後の場合は全開タイプがおすすめ。
また産褥ショーツは股上部分が深いもの、柔らかいガーゼ素材になっているものなど、傷跡への負担が少ないデザインになっています。
入院期間分は用意しておくと安心でしょう。

そのため、「横向きは避けるべき」といった厳密な制限はなく、体の痛みや不快感に応じて姿勢を選ぶことが推奨されます。
まとめ
帝王切開はおなかを切開する手術であるため、身体の負担は普通分娩より大きい状態にあります。
産後は育児や家事を完璧に行おうとせずに、赤ちゃんと自分の身体のことを優先的に考えるようにしましょう。
家族に協力してもらえるとよいのですが、難しい場合には各市町村が行っている産前・産後サポート事業や産後ケア事業のサービスを活用し、一人で抱え込まないようにしましょう。
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
助産師 坂田陽子 先生
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー