帝王切開の傷跡はどんな感じ?傷跡のケア法

記事監修者:坂田陽子
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

帝王切開には跡がつきもの
帝王切開は何らかの理由で経腟分娩ができないときにおなかと子宮を切開して赤ちゃんを取り出す分娩方法です。事前に日程を決めて行う予定帝王切開と経腟分娩の途中から急遽行う緊急帝王切開があります。
近年、帝王切開によるお産は増加傾向にあり、妊婦さんの4~5人に1人は帝王切開で出産しています。
帝王切開による出産ではどうしても傷の跡が残ってしまいます。しかし、きちんとケアをすることで傷の跡を目立たなくすることができます。
今回は帝王切開の傷の跡がどのようなものなのかをご説明いたします。傷跡をケアする方法についてもご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。
帝王切開の傷の処置
帝王切開の皮膚の切り方には、大きく分けて縦切開と横切開があります。それぞれ利点と欠点があり、何を重視するかによって、皮膚の傷が縦になるか横になるかが決まります。
縦切開は腹腔内が良く見え手術操作がしやすく、赤ちゃんを素早く取り出すことができるという利点があるため緊急時に選択されることが多くなります。また傷の延長が可能で術後の痛みは少ないといわれています。しかし傷の跡がへそから縦に残るため、位置的に目立ちやすいことが欠点です。ケロイド(傷の跡が赤く盛り上がった状態)にもなりやすく目立つことが多くなります。
一方、横切開では、恥毛のすぐ上をおなかのしわに合わせて横に切ります。傷の跡はおなかのしわや下着に隠れて目立ちにくく、ケロイドになることも少ないといわれています。予定帝王切開では横切開が選択されることが多いようです。赤ちゃんを取り出すのに若干時間がかかり、術後の痛みが強いといわれています。また、術後は傷口の感覚が鈍くなってしまうという欠点もあります。
帝王切開の傷跡の経過
切開後、赤ちゃんを取り出したら子宮とおなかの傷をそれぞれ縫合します。まずは溶ける糸(吸収糸)で子宮の切開部を縫合し、続いておなかの傷を縫い合わせます。皮膚の縫合には吸収糸やステープラー(医療用ホチキス)が使われます。
帝王切開手術による傷は、術後から3日程度で閉じていきますが、皮膚の下で炎症は続いており、赤い腫れや痛みが生じます。この時期は炎症期と呼ばれています。傷が閉じると新しい細胞が生まれ、傷を埋めていく増殖期が3週間〜1カ月程続き、赤みや痒みが生じることがあります。増殖期を過ぎると次第に肌に近い色になっていく成熟期を迎えます。
新しい細胞が生まれる増殖期に体質(女性ホルモンや高血圧の影響、遺伝的要因)や物理的刺激(皮膚が引っ張られる伸展刺激、衣類のこすれなどによる摩擦刺激)により、肥厚性瘢痕(元の傷に沿って盛り上がり赤みや痒みを生じる状態)やケロイド(元の傷の範囲を超えて赤みと盛り上がりが広がり痛みや痒みが生じる状態)になる要因が加わると炎症が継続してしまい、赤く盛り上がった目立つ傷跡になる可能性があります。肥厚性瘢痕は2年から5年で元の肌色に近い状態になることもありますが、ケロイドは自然に治ることが少ないといわれています。
帝王切開の傷跡のケア
帝王切開による傷跡をできるだけ目立たなくするには、傷跡のケアが重要です。肥厚性瘢痕やケロイドになる要因の中でも体質によるものは予防やケアが難しいですが、物理的刺激によるものはセルフケアで予防することができます。
物理的刺激の中でも近年特に注目されているのは傷跡に対する伸展刺激です。伸展刺激とは皮膚が引っ張られる刺激のことです。目立たない傷跡にするためには傷跡専用テープを使って伸展刺激を抑制することが重要です。テープを使うことで衣類や下着のこすれによる摩擦刺激の軽減にもなります。ただし、テープをはがす時の刺激も物理刺激となりますので、張り替える際は注意が必要です。肌に優しい粘着剤を使っているテープもあります。テープは傷口が完全に閉じ、抜糸またはステープラーや皮膚接合用テープをはずしてから使うことができます。
下腹部は日常の動作で力を入れることが多く、それによって皮膚や筋肉が引っ張られるため、傷跡が肥厚性瘢痕やケロイドになりやすい傾向があるといわれています。術後半年ごろまでは傷跡に負担がかかるような激しい運動は避けるようにしましょう。紫外線は傷跡が黒ずむ原因になるので紫外線対策も重要です。また、肌の痒みを引き起こす乾燥にも注意しましょう。
術後1年が過ぎても傷跡に赤みがある、傷跡が硬い、傷跡が盛り上がっているといった場合には、形成外科や皮膚科などの専門医に相談しましょう。肥厚性瘢痕やケロイドは形成外科や皮膚科で治療することができます。傷跡の状態によって内服薬、ステロイドの外用薬や注射、放射線、レーザー治療、手術など様々な方法を使い分けて治療します。
帝王切開の跡は勲章!
帝王切開の跡は時に勲章と呼ばれることがあるそうです。
私自身、3人の子供を帝王切開で出産していますが、子供たちに帝王切開の跡を見せて「あなたたちはここから生まれてきたんだよ」と話して聞かせることがあります。
年々目立たなくなってきているこの跡ですが、母親としての誇りだと思っています。
これから帝王切開で出産される方の中には帝王切開に対してネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、どんな方法であれ、出産はお母さんが命がけで赤ちゃんをこの世に導くことであり、大切なのは産み方よりも育て方です。
帝王切開を前向きに捉え、赤ちゃんと幸せな生活がスタートできますように!
赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?
赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。
幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。
- 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
- 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
- どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
- 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
- それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。
実際に保管・利用した方のお声
出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま
さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています
元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。
さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。
その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。
医師からのメッセージ

総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生
応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療
近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。
さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
保管するなら、ステムセル研究所の「HOPECELL(ホープセル)」
株式会社ステムセル研究所が提供する「さい帯・さい帯血ファミリーバンクHOPECELL(ホープセル)」は、日本国内で最も選ばれている保管サービスです。
ステムセル研究所は、25年以上の保管・運営実績がある日本初のさい帯血バンクで、国内最多となる累計80,000名以上のさい帯血を保管しています。

研究所

研究所
国内では脳性まひに対する、赤ちゃんご自身やごきょうだいのさい帯血投与の研究が行われています。海外の臨床研究では、投与により運動機能および脳神経回路の改善が報告されています。また自閉症スペクトラム障害(ASD)に対して、さい帯血の投与によりコミュニケーション能力や社会への順応性が向上する可能性が期待されており、大阪公立大学にてお子さまご自身のさい帯血を投与する臨床研究が開始されます。

研究所
無料パンフレットをお送りします!
さい帯・さい帯血保管についてより詳しく知っていただけるパンフレットをご自宅へお送りします。
赤ちゃんの将来に備える「さい帯・さい帯血保管」をぜひ妊娠中にご検討ください。

この記事の監修者
坂田陽子
経歴
葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。
日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業
資格
助産師/看護師/国際認定ラクテーションコンサルタント/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー