高齢出産は何歳から?5つのリスクやメリットも紹介

助産師 坂田陽子 先生

記事監修者:助産師 坂田陽子 先生

助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー

「何歳から高齢出産になるのだろう」

「高齢出産だと、どんなリスクがあるのか不安…」

と疑問や不安に思っていませんか。

高齢出産は35歳以上での初産をさします。

高齢出産にはさまざまなリスクが伴いますが、メリットも存在するのです。

この記事では、おもに以下の内容を解説していきます。

・高齢出産の定義
・高齢出産のリスク
・高齢出産のメリット

この記事を読むと、高齢出産について正しい知識が得られ、きっと不安が軽減されますよ。

高齢出産の定義は35歳以上

世界産科婦人科連合では高齢出産を、

・初産婦:35歳以上
・経産婦:40歳以上

と定義しています(※1)。

30歳を過ぎると妊娠や出産に伴うリスクが少しずつ高くなり始め、35歳以上になるとそのリスクがさらに著しくなることから、この年齢が基準とされています(※2)。

また近年は晩婚化などの社会背景もあり、35歳以上で出産する女性の割合は年々増加しているのが実状です。

実際に厚生労働省が公表している、令和6年人口動態統計月報年計(概数)によると、年齢別の出生数は、以下のとおりです(※3)。

・35~39歳が16万2,625人
・40~44歳が4万3,463人
・45歳以上が1,733人

これらを合計すると、35歳以上の出生数は20万7,821人で、総出生数68万6,061人のうち約「30.3%」を占めています。

(※1)出典:J-STAGE|山口大学大学院医学系研究科母子看護学分野(村上 京子)「高年妊娠および出生前診断に対する女性のリスク認識と情報選択ニーズ」山口医学 2016 年 65 巻 1 号 p. 5-13

(※2)出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「高齢出産は高リスク? 35歳以上での妊娠・出産の注意点を解説」

(※3)出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 」

高齢出産で考えておくべき5つのリスク

高齢出産によって生じるリスクについてあらかじめ考えておくことが必要です。

以下の5つについてご紹介します。

・染色体異常
・流産・早産
・妊娠高血圧症候群
・妊娠糖尿病
・難産

順番に見ていきましょう。 

リスク1:染色体異常

高齢出産で心配する人が多いのが、ダウン症などに代表される染色体異常のリスクです。

高齢になるほど、ダウン症の発生が高まるといわれています。

また染色体異常症にはさまざまな種類があり、ダウン症はそのひとつに過ぎません。

胎児がダウン症の可能性を検査できる「出生前診断」は妊娠10週から受けられます(※4)。

母体の血液を採取するだけで検査が受けられる安全性の高いものである一方、確定的な診断がおりる検査ではありません。

つまり、リスクが高いか低いかを診断するものです。

また、保険適用外の検査であるため、検査費用は高額になります。

ほかにも染色体異常の確定的な検査として「羊水検査」がありますが、腹部に針を刺し羊水を採取するため、流産や早産、出血や感染症などのリスクもあります。

そのため、まずは新型出生前診断を受けて、可能性が高い場合に羊水検査を受けるというケースも多いです。

羊水検査は妊娠15週以降に受けられます(※5)。

NIPTとは?検査でわかる病気や的中確率も解説

(※4)出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「 NIPT」
(※5)出典:こども家庭庁「出生前に行われる遺伝学的検査に関する見解」

リスク2:流産・早産のリスク

高齢出産では流産や早産のリスクが高くなります。

流産とは、妊娠22週までに起こるものをさします(※6)。

厚生労働省の調査資料によると、自然流産の確率は妊娠全体の13.9%でしたが、35歳~39歳では20.7%に発生していました(※7)。

その原因の多くは胎児側の染色体異常です。

母体の加齢によって、卵子も老化するため、染色体異常を引き起こしていると考えられています。

(※6)出典:働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート母性健康管理に関する用語辞典

(※7)出典:厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」母の年齢と自然流産率

リスク3:妊娠高血圧症候群

妊娠中のリスクとして一番大きいのは、妊娠高血圧症候群です。

妊娠高血圧症候群のリスクは20~34歳の妊婦さんと比較して、35歳以上だと約1.7倍、40歳以上だと2倍以上のリスクがあります(※8)。

高血圧症になると脳出血や痙攣のリスク、胎児の発育不全になる可能性があるのです。

根本的に妊娠高血圧症候群を治す方法はなく、母体や胎児にとって妊娠の継続が悪影響をおよぼすと考えられたときには、妊娠を終わらせること、即ち出産が一番の治療になります。

状態によっては管理入院が必要になる場合もあり、その期間は長期になることも。

予防法としては、塩分を控えめにした食生活にすることや体重管理に気をつけることがあげられます。

すでに妊娠高血圧症候群である場合、運動は控え、安静にすることが必要です。


(※8)出典:厚生労働省「第3回「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」年齢と妊娠・出産に伴う合併症のリスク評価について

リスク4:妊娠糖尿病

妊娠してから初めて発見された糖代謝異常をさします。

妊娠前から糖尿病があった場合は含まれません。

母体が高血糖になると、胎児も高血糖になり、さまざまな合併症のリスクも高まるのです。

妊娠糖尿病の管理は、食事療法を中心に行われますが、改善されない場合は胎児に影響の少ないインスリン注射によってコントロールする場合もあります。

高齢出産の場合、妊娠糖尿病になる可能性が高くなるため、日頃から食生活に対して気をつける必要があります。

また肥満傾向がある方や、家族に糖尿病歴のある人はとくに注意が必要です。

リスク5:難産

高齢出産の場合、難産になりやすいといわれています。

年齢と共に、産道や子宮口が硬くなるためです。

その影響でお産に時間がかかってしまい、母体や胎児への負担が大きくなります。

危険な状態になれば、緊急帝王切開になる可能性もあります。

また産後の回復も遅いため、あらかじめ準備や心構えが必要です。

▼緊急帝王切開ってどんな時にするの?リスクや流れについて詳しく知る

緊急帝王切開をする理由とは?適応される確率や体験談も紹介

高齢出産にもメリットはある

身体的にリスクの多い高齢出産にもメリットはあります。

ひとつめのメリットは「経済的余裕」です。

早い年齢で出産育児に入り産休や育休、時短勤務で働く人に比べると、夫婦ともにフルタイムで働く期間が長いため経済的余裕が生まれます。

育児には大きな出費が生じるタイミングが多いため、その度にお金の心配をしないでよいのはメリットといえるでしょう。

2つめのメリットは「心理的余裕」です。

ある程度社会で経験をしているため、若いころに比べて想定外の事態にも動じずに受け止められるようになっている可能性が高いでしょう。

また会社の中でもある程度キャリアアップできていることで、育休明けに職場に戻りやすいというメリットもあります。

高齢出産するときの過ごし方2つのポイント

高齢出産時の妊娠生活における注意ポイントとして、以下の2つがあげられます。

・栄養バランスの整った食生活を心がける
・定期的な健康診断・検査の受診

順番に見ていきましょう。

ポイント1:栄養バランスの整った食生活を心がける

高齢出産では、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった合併症のリスクが若い年齢の妊娠と比べて高まるため、日頃からの食生活への配慮が大切です。

主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスのよい食事を心がけ、塩分は控えめに、高たんぱく質かつ低カロリーの食材を中心に摂取するとよいでしょう。

なかでも意識したい栄養素として「葉酸」があげられます。

葉酸はビタミンの一種で、胎児の体を作るための細胞分裂やDNAの合成に欠かせない成分です。

摂取不足であると、胎児の脊髄や脳が正しく発育せず「神経管閉鎖障害」が起こりやすくなるといわれています(※9)。

そのため厚生労働省では、神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、通常の食品以外に含まれる葉酸(サプリメントなどから)「400μg/日」摂取を推奨しているのです(※10)。

鉄分やカルシウム、食物繊維などの栄養素をバランスよく摂取することで、肥満・やせすぎを防ぐことにもつながります。

▼妊娠中の食生活について知っておきたいポイント

妊娠中の食事ポイント5つ|OK/NGの食べ物一覧

(※9)出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「高齢出産は高リスク? 35歳以上での妊娠・出産の注意点を解説」

(※10)出典:厚生労働省「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」

ポイント2:定期的な健康診断・検査の受診

妊娠を考え始めた段階で、出産に悪影響を与える病気が潜んでいないか検査を行いましょう。

一般的な健康診断のほかにも、

・子宮頸がん検診
・乳がん検診
・風疹抗体検査

などを受けておくとよいでしょう。

高齢妊娠では妊娠前合併症の頻度も上昇しますが、産科合併症の頻度も増します(※11)。

定期的に自身の健康状態を把握しておくことが、高齢出産に向けた準備として大切です。

妊婦健診について詳しくは、以下の記事でも詳しく解説しています。

妊婦健診を受ける5つの目的とは?妊婦健診のスケジュールや検査内容、費用の目安も紹介

(※11)出典:J-STAGE|杏林大学医学部産科婦人科学(古川 誠志)「高齢妊娠に伴う諸問題」杏林医学会雑誌 2016 年 47 巻 1 号 p. 77-79

高齢出産に関するQ&A

ここでは高齢出産について、よくある3つの質問をまとめました。

順番に見ていきましょう。

40歳以上で出産したときのリスクは?
坂田先生
40歳を過ぎての出産では、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、早産などのリスクがやや高くなるといわれています。

また、分娩時に帝王切開になる割合も増える傾向があります。

ただし、近年は医療体制が整っており、定期的に健診を受けて体調をしっかり管理すれば、安心して出産を迎える方もたくさんいます。

高齢出産でダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は?
坂田先生
年齢が上がるにつれて染色体異常の確率は少しずつ高くなります。

例えば、35歳で約300人に1人、40歳で約100人に1人といわれています。

ただし、確率はあくまで統計的な目安であり、すべての妊婦さんに当てはまるわけではありません。

必要に応じて出生前検査を受けることもできますので、気になる場合は主治医に相談してみましょう。

初産婦と経産婦で、高齢出産のリスクに違いはある?
坂田先生
初産婦の場合は出産に時間がかかりやすかったり、体への負担がやや大きくなる傾向があります。

一方、経産婦でも年齢によって妊娠高血圧症候群などのリスクは高くなるため、どちらも注意が必要です。

ただし、過去の妊娠・出産の経験があると体調管理のポイントをつかみやすく、精神的に落ち着いて臨めるというメリットもあります。

まとめ

女性のキャリアアップが進んだり、不妊治療が普及したりと子どもを持つ年齢が高くなり、高齢出産は珍しくなくなりました。

たしかに高齢出産によって、染色体異常や妊娠糖尿病などのリスクが多いデメリットはありますが、人生経験が豊富である高齢出産には、経済的余裕や心理的余裕があるというメリットがあるのも事実です。

年齢を気にして赤ちゃんを諦めることなく、正しい情報を調べ、母子ともに健康な出産に臨めるとよいですね。

赤ちゃんの未来に備える「さい帯・さい帯血保管」を考えてみませんか?

赤ちゃんとお母さんをつなぐ、「へその緒(さい帯)」と、その中を流れる血液「さい帯血」には、体を作るためのもととなる貴重な「幹細胞」が多く含まれていて、赤ちゃんやご家族の将来に備えて長期的に凍結保管することができます。

幹細胞は新しい医療への活用が進められており、もしもの時に役立てられる可能性があります。

さい帯・さい帯血保管のポイント!

  1. 出産後わずか数分の間にしか採取できない貴重な赤ちゃんのものです。
  2. 採取の際、お母さんと赤ちゃんに痛みや危険はありません。
  3. どちらにも幹細胞がたくさん含まれています。
  4. 再生医療分野など、さまざまな活用が進んでいます。
  5. それぞれ異なる幹細胞が含まれているため、両方を保管しておくことで将来の利用の選択肢が広がります。

実際に保管・利用した方のお声

出産時にしか採取できない「さい帯血」を、脳性まひのお子さまに対して臨床研究で使用された方のお声をご紹介します。

高知大学の臨床研究で
さい帯血投与を受けたお子さま

さい帯血を保管して
本当に良かったと思っています

元気に産まれたと思っていましたが、生後半年頃から左手をほとんど使おうとしないことに気付き、1歳頃にやはり何かおかしいと思ってMRIを撮ってもらうことにしました。結果1歳5ヶ月で脳性まひとわかりました。
2歳の誕生日にステムセルからハガキが届き、出産時に保管したさい帯血がもしや役に立つのではと思い至りステムセルに問い合わせました。ちょうど臨床試験への参加者を募集していて、運よく2歳5ヶ月のときに参加することができました。
輸血前は左手と左足に麻痺があり、歩けてはいるものの、とても転びやすく、少し歩いては転びを繰り返していました。しかし輸血後、翌日には転ぶ回数が減り、おもちゃを両手で掴めるようになって驚きました。その後もリハビリも継続し、完治したわけではありませんがかなり麻痺が軽くなったように思います。
現在、地域の小学校の普通級に集団登校で通えています。
まさか我が子がさい帯血を使って治療をすることになるとは思っていませんでしたが、保険のつもりでさい帯血を保管しておいて本当に良かったと思います。

さい帯・さい帯血を利用した再生医療の研究が、今まさに国内外で進んでいます。

その他のお声は公式サイトからご覧いただけます。

医師からのメッセージ


総合母子保健センター
愛育病院 病院長
百枝幹雄 先生

応用範囲が広がる
「さい帯・さい帯血」による再生医療

近年、めざましく進歩している再生医療のなかで、さい帯やさい帯血の幹細胞を利用する技術の最大の特徴は、通常は破棄してしまうけれども実はとてもポテンシャルの高い出生時の幹細胞を活用するという点です。
これまで有効性が示されている白血病、脳性まひ、自閉症のほかにも様々な疾患に対して臨床研究が進んでいますし、民間のバンクではご家族への利用も可能になりつつありますので、今後はますます応用範囲が広がることが期待されます。
一方、忘れてはならないのは必要になるまで幹細胞を長期間安全に保管するには信頼できる設備と技術が必要だということで、それにはそれなりのコストがかかります。
コスト・ベネフィットのとらえ方は人それぞれですが、お子様とご家族の将来を見据えてベネフィットが大きいとお考えの方には、信頼できる施設へのさい帯やさい帯血の保管は十分価値のある選択肢だと思います。

さい帯・さい帯血についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

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この記事の監修者

助産師 坂田陽子 先生

経歴

葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院でNICU(新生児集中治療室)や産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。
その後、都内の産婦人科病院や広尾にある愛育クリニックインターナショナルユニットで師長を経験。クリニックから委託され、大使館をはじめ、たくさんのご自宅に伺い授乳相談・育児相談を行う。

日本赤十字武蔵野短期大学(現 日本赤十字看護大学)
母子保健研修センター助産師学校 卒業

資格

助産師/看護師/ピーターウォーカー認定ベビーマッサージ講師/オーソモレキュラー(分子整合栄養学)栄養カウンセラー